糖尿病をとことん知る (5) 糖尿病の薬について
献立作成者:広瀬輝美 |
今回は、糖尿病の薬(経口血糖降下剤)についてお話をします。
糖尿病の治療は、食事療法・運動療法・薬物療法と言われています。
食事に気をつけ、運動もしているのになかなか血糖値が下がらない時に薬物療法を始めます。
薬物療法には飲み薬(経口血糖降下薬)とインスリン注射があります。
高すぎる血糖値を正常範囲までに低下させ、合併症を防ぎます。
現在、処方されている経口薬は大きく分けて6種類あります。
経口薬の名称 | 薬の働き |
スルフォニル尿素剤 (SU剤) |
インスリンを作る膵臓のβ細胞に働きかけてインスリン分泌を促し血糖値を低下させます。血糖値を下げる作用が強い薬です。 副作用として低血糖が起きることがあります。 |
ビグアナイド薬 | 肝臓が血液中に糖を送り出すのを抑えたり、筋肉などの糖の利用を促して血糖値を下げる。また筋肉や肝臓などでのインスリンの効きを改善します。 |
α−グルコシダーゼ 阻害薬 |
食物に含まれているでんぷん・糖の分解・吸収を遅らせることで、食後に血糖値が急激に高くならないようにします。 |
速効型インスリン 分泌促進薬 |
SU剤と同じようにインスリンを分泌する膵臓のβ細胞に直接刺激してインスリンの分泌を促します。SU剤に比べて薬を飲むとすぐに作用が現れ、作用時間が短いのが特徴です。 |
インスリン抵抗性 改善薬 |
内臓脂肪型肥満では、内臓にたまった脂肪からサイトカインという物質がインスリンの効きにくい状態になります。(インスリン抵抗性)インスリンの抵抗性を少なくすることでインスリンの作用を高めて血糖値を下げます。 |
DPP−4阻害薬 | 食後に十二指腸や小腸から分泌される「インクレチン」というホルモンは血糖値が高いときだけ膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促します。この薬はインクレチンを分解する酵素の働きを阻害することでインクレチンの働きを助ける薬です。 |
それぞれの薬には用法・用量が決まっています。
また、薬には副作用がありますので、症状がでた時は主治医に相談してください。
インスリン注射について
糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの作用が不足して、血糖が高くなる病気です。
不足している分のインスリンを注射により体内へとりいれることで高血糖を改善します。
1型糖尿病では、膵臓のインスリン分泌がほとんどなくなるのでインスリン療法を毎日行っていく必要あります。
2型糖尿病では、食事や運動さらに経口薬を使っても血糖値のコントロールがうまくいかないとインスリン療法が必要になります。
健康な人のインスリン分泌を下図に示します。
インスリンには、24時間ずっとベースに少量分泌されている基礎分泌のインスリンと、 食後に血糖値が上昇した時に出る追加分泌のインスリンがあります。
食事をすると血糖値が上昇します。するとインスリンが追加分泌されて血糖値を下げます。
1型糖尿病の場合は、基礎分泌も追加分泌もほとんどなくなっているので、基礎分泌と追加分泌の両方をインスリン注射で補います。
基礎分泌を補うのに中間型や持続型、追加分泌を補うのには超速効型や速効型のインスリンを注射して、健康な人のインスリン分泌に近づけます。
2型糖尿病の場合は、基礎分泌はある程度保たれているので、追加分泌を超速効型や速効型のインスリンを注射して、健康な人のインスリン分泌に近づけます。
2型糖尿病の人だけに処方される注射器タイプの治療薬も発売されています。
種 類 | 効果が出るまでの時間 | 持続時間 |
超速効型インスリン製剤 | 注射後数分後 | 約3〜5時間 |
速効型インスリン製剤 | 約30分 | 約5〜8時間 |
中間型インスリン製剤 | 約1時間30分 | 約18〜24時間 |
混合型インスリン製剤 | 約30分 | 約18〜24時間 |
持続型インスリン製剤 | 約4時間 | 約24〜28時間 |
時効型インスリン製剤 | 持続型よりも速い (1日1回) |
約24時間 |
それぞれの特徴を生かして血糖値をコントロールします。
インスリン注射は皮下組織に注射します。注射に適した部位は、腹部、上腕、臀部、大腿です。
吸収速度は腹部が一番早く、上腕、臀部、大腿の順になります。
いつも同じ場所に注射をしていると固くなってしまうので、少しずつずらして注射をします。
糖尿病の基本は血糖コントロールです。
しかし、厳格にコントロールをすればするほど当然のように低血糖が起きます。
低血糖時の対処法も知っていなければなりません。
低血糖の症状は、発汗、手足の震え、動悸、吐き気、集中力の低下、ろれつが回らない、物が二重に見えるなどです。
ご自分の低血糖症状の特徴を知っておくことは大事です。
低血糖になったら、ブドウ糖や糖分のあるジュースをとると回復します。低血糖で意識障害がでたときは家族や身近な人に対処してもらいます。
低血糖にならないようにするには
できるだけ規則正しい生活を心がけて
血糖値のコントロールと低血糖予防をしましょう。
今回の献立の栄養量
エネルギー量 (Kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
炭水化物 (g) |
519 | 26.8 | 9.9 | 82.3 |
カルシウム (mg) |
コレステロール (mg) |
食物繊維 (g) |
塩分 (g) |
87 | 168 | 6.2 | 2.7 |